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2008年02月 アーカイブ

2008年02月06日

日本海沿岸4県の17JC、日沿道などの整備促進求め東京で集会

日沿道などの整備促進求める 日本海沿岸4県の17JC集会(山形新聞)

だいたいだ、いまいち形成できていない日本海側のつながりを今から作るメリットがいかほどにあろうかという疑問は残る。例えば庄内と新潟がつながるとなんとなく嬉しいけど、そこまで使うかと言ったら使わない気がするし、秋田とつながって嬉しいかと言うとなおさら疑問だ。もっとも、これは田川のほうの出身の感覚だからかもしれなくて、飽海のほうの人は逆に考えるのかもしれないけれど。どうしても、庄内から内陸、あるいは仙台のほうに目が向いてしまうんだよね。もし日沿道ができて、政令指定市である新潟へのアクセスが向上したからといって、今まで山形や仙台に向いていた目線がそちらにシフトするかというと、毎回書いていることだけど、別問題だと思う。高速道路は、というかインフラはあくまでハードであってツールであるから、ソフトを充実させないと吸い取られるだけだ。

> 同協議会のメンバーからは「私たちは、エゴで道路がほしいと言っているのではない」
> 「地方の人々にとって道路は、生きるために必要なもの」など、
> 地方の道路整備を無駄遣いとする一部世論に反論する意見が出た。
という声があるそうだけど、生きるために必要などと言い切るのであれば、そのインフラを活かすほうにも全力を投じてほしいと思う。作ってもらったけど活かせないのでまた陳情に陳情、補助金に次ぐ補助金、ではいつまでたっても日本海国土軸なんか作れやしないっての。

2008年02月08日

飯豊町のデマンド交通システム、原油高で新年度から値上げへ

飯豊デマンド交通値上げへ 原油高で新年度から(山形新聞)

> 町営バスに代わる公共交通機関として、デマンド交通システムを導入している飯豊町は7日までに、
> 原油価格高騰のあおりで燃料費がかさむことや新路線設置による経費増から、
> 新年度をめどに利用料金を値上げする方針を固め、調整に入った。

と、世の中を騒がせている原油の高騰がこんなところにも余波。
でもなんとなく一段落しそうなので、4月から値上げしても話の整合性があわなくなるんじゃないかと思っていたら、

> 「原油価格の下落や大幅な利用増があれば、『値下げ』もあり得る」としている。
だって。

新しい料金は、原稿料金からプラス100円。はたしてこれで業績圧迫は緩和されるのか、はたまたこれが利用者を減らしていっそう悪化する原因となるんだろうか。
意外だなと思ったのは、既に2年ほど経過しているこの飯豊のデマンドシステム、
> 本年度の1日平均利用人数は85人に上り、
> 運行開始当初と比べて約20人増えるなど、町民の足として定着してきた。
と、なかなかの実績を積み上げてきていること。
これまで、このブログでは高畠のを少し取り上げた程度(しかもかなり否定的に)だったけど、このシステムは中規模の農村地域では有効なのかもしれないなと思い始めてきた。

2008年02月09日

原油高騰への対策で高速道路深夜割引を30%OFF→40%OFFに

原油価格の高騰に伴う緊急対策としての高速道路料金の引下げの実施について(国土交通省道路局)
原油価格の高騰に伴う緊急対策としての高速道路料金の引下げの実施について(NEXCO東日本)

ぽっと出てきたこのニュース、結論から先に書くと、
「2月15日(金)午前0時から、1年間を予定として高速道路の深夜割引を現行の3割引から4割引にする」
というもの。

そもそもなんでこんな話が出てきたのかというと、上の記者発表を見ると、昨年12月に政府の「原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議」で、
原油価格の高騰に対して、中小企業の輸送コストが圧迫されないように、
> ・安定的な物流コストの確保等を図るため、
> 現在、高速自動車国道に導入されている深夜割引(0~4時:3割引)を拡充し、4割引とする。
という対策が取りまとめに盛り込まれたもの。

さて、ここで不思議なのは、いくら国民の生活や経済活動に直結することとはいえ、高速道路の料金に首を突っ込んでいいものなんだろうか。見方によっては国が上から力でもって高速道路会社の収入を減らしているわけだ。

そのミソが、国と高速道路3会社連名の記者発表資料の末尾にある。
> 一昨日、平成19年度補正予算が成立しましたので、
> この取りまとめを踏まえ、以下の通り高速道路料金の引下げを実施いたします。
そう。国の施策による割引の拡大によって、ETC車は実質15%の減収になることから、国はその減収分を国費によって補うということだろう。緊急対策関係閣僚会議の資料では、平成19年度補正予算で67.3億円、平成20年度予算で235億円を計上しているようだ。

もちろん、割引の拡大は一般の利用者にとっても嬉しいこと。
例えば山形蔵王と仙台宮城の間の料金は、普通車なら通常1,600円のところ、深夜割引適用後1,100円だったものが950円と650円も安くなる。大型車も2,500円から1,750円に割引になっていたところが1,500円になり、非ETC普通車より安くなることになる。
けれども、なんだかんだ言っても国の施策や呪縛からは逃れきれない高速道路会社を見ていると、道路が鉄道と異なるインフラ形態であるとはいえ、少しやるせない気分になってしまう。

2008年02月12日

くねくね道でまちおこし 山形~山辺の「狐越街道」を住民考案

くねくね道でまちおこし 山形―山辺の街道を住民考案(河北新報)

これは結構面白い。
起点を県庁、終点を文翔館にしたのはいささか取ってつけたような感じがするけれど、そうでもしないと「コース」として示しにくいから仕方ないか。
ルートは、というと県庁からひたすら西に向かい、R348で山形警察や南一番町を抜け、西公園を過ぎてもさらに西へ西へ。すると県道17号は急に山がちになり道も大きくカーブするようになる。なるほど「狐越街道」とは言いえて妙だ。県民の森を通り抜け、県道49号との三叉路にぶつかると今度は北に進路を取る。この記事にも出ている作谷沢の集落を過ぎると、再びR458に戻ってくる。そのまま更に東に進めば山形駅の北側に戻ってくるという道程。

河北新報から

この
> 「取り残された形だが、曲がりくねった道が『保存された』と考え、活用策を探った」と言う。
という逆転の発想が、何かのヒントになりそうな気がする。とかく最近の道路整備は、なんでもかんでも旧道をショートカットしてバイパスしていく。となると、取り残された旧道沿いの集落はとたんに交通のメインルートから外れることになる。両端をくっと曲げられてしまい、妙に立派なアスファルトの道が放置されている箇所もある。

問題は、
> 「街道沿いの集落を一品料理に見立て、一巡りすれば立派なオードブルを味わえる」
というだけの「立派なオードブル」を構成するだけの集落を作れるかどうかというところ。
単にカーブの多い道をつなげただけというだけでは、猛スピードで通過する車だけがやってくる。

周辺には県民の森をはじめ、豊かな自然環境もあれば山形市街から近いという立地条件もある。
> 「看板の番号を地図に落とし、小さな名所を紹介するマップをつくりたい。
> 食や自然の楽しみを伝えられれば」と話し、狐一巡り街道の今後の活用に夢を膨らませている。
その意気込みにぜひとも期待したいところ。

河北新報から

スリップ対策再徹底 県内で相次ぐバス絡む事故

スリップ対策再徹底 県内で相次ぐバス絡む事故(山形新聞)

> 県内でバスが絡む交通事故が多発している。
という出だしではっとしたけど、確かにその通りだ。
先週末に田麦俣で発生した、バス誘導中にスリップしてバスガイドが車体と雪壁に挟まれた事故は、思わず「そんな馬鹿な」と言ってしまいそうな話だ。

こうした中、県がバス協会に文書で申入れを行ったほか、各バス会社でも
> 山交バス(山形市)は、天候や路面状況に応じた早めのチェーン装着を徹底。
> 「運行中でも必要があれば停車してチェーンを装着させている」と担当者。
> 庄内交通観光バス・ハイヤー(鶴岡市)は
> 「事故の多発を受け、気象情報を集めて例年以上に慎重に対応している」という。
とのこと。

バスは大勢の客の命を預かることが多いだけに、よりいっそうの安全確保に努めてもらいたいもの。
冬はまだまだ続くのだから。

2008年02月18日

菅直人の行き当たりばったりと、山形の首長のこんなのばっかり

どうも「ガソリン国会」の熱は小康状態を保っているようで、これは与党に有利なのか野党に有利なのか。
そもそも、「原油の高騰が家計を圧迫している」として槍玉に上がった暫定税率の問題、「ガソリンが25円安くなる」という言葉で短期決戦を図った(ように見えた)野党だけど、参院選勝利のベースとなった地方の首長から「道路特定財源のカットは死活問題」と反撃を食らい暗雲が立ち込める。結局、いつの間にか税制の面で言えば一般財源化の問題だったり地方分権だったりに移り、道路特定財源という目的税の使い道の点では「道路の中期計画」だったり、果てはレクリエーションへの使用問題だったりと拡散してしまった感じ。おっと、誤解のないように書いておくと、道路特定財源を職員の余暇に使うのを見逃せって言っているわけじゃない。数万円を論じるあまり数億円の論議が流れるのは(流れるんだよこれが。マスコミが食いつきやすいんだもん)逆におかしいことを招くと思うだけ。
野党にとっていちばん誤算だったのが、論点が拡散したことよりも地方の首長から思いのほか反発が強かったことよりも、ガソリン価格が小康状態になってしまったことというのが、いっとう情けないことだけど。石油情報センターの価格情報によれば、レギュラーガソリンの1リットルあたりの価格は、昨年の12月10日がピークで155円50銭。第169回国会が召集された1月3週には153円台に。そして2月13日に発表された同12日現在の平均価格は152円30銭。12月1日に石油元売各社がいっせいに値上げした前のレベルまでは下がっていないものの、実はピーク時から8週連続で下落している。3月末までの約6週間で風を呼び込めるのはどちらだろうか。

さてその頃、かつてお遍路姿で四国を回った菅直人は車で東九州へ。
「今日は車で来ました」 民主・菅氏が宮崎・延岡市入り(朝日新聞)
大分空港~延岡3時間、視察の菅氏「幹線道路がないのは実感」(読売新聞)
車で縦断 道路事情見えた!? 民主・菅氏、宮崎県内を視察(西日本新聞)
菅氏が宮崎の道路視察「この遅れは異常」(ニッカンスポーツ)

> 出迎えた首藤市長に開口一番「今日は車で来ましたので」とアピールした。
> 延岡市を先日視察に訪れた民主党の若手国会議員はJRで現地入りし、
> 首藤市長から「車で来ないで、高速道路のない不便さがわかるか」などと
> 批判を受けた経緯があるからだ。(朝日新聞)
おお、なんという軽薄さ。カイワレを食べた頃から一歩も進歩が見られない。

まあそれでも
> 大分空港から延岡市の視察先まで車で約3時間もかかり
> 「東九州に幹線道路がないというのは実感できた」という感想も漏らした。(読売新聞)
という一定の理解を得られたことはやはり百聞は一見に、ということか。

というよりも、これまでこの人はこの地域に思いをめぐらせたことが果たしてあったのかと素で思ってしまう。羽田から大分空港までかかった時間のさらに倍をかけて隣県に行くというこの状況を。かねてから,
地方のことを考えるのに日本地図を見るだけで考える人は嫌いだ、と何度か書いているけど、この人は地図すらも見たことが無いんじゃないかな。見たことがあるとすれば衆議院の選挙区割表程度か。

実は、
> 19日には東国原英夫宮崎県知事らと都内で公開討論が予定されており、
> 菅氏は「現場を見ておくのは重要だ。討論会が実り多いものにできる」と述べた。(ニッカンスポーツ)
この最後の文を読むまでは、このエントリーも別の〆め方になるはずだった。一桁国道に並行する高速道路の整備率が50%未満なのは、この東九州道(R10・一桁じゃないけど上位10番なので)と山陰道(R9)、そして日沿道(R7)だ、という話の展開で、「ならば日沿道にも菅直人を」という内容に持っていくつもりだったけどご破算に。なんだ。この1泊2日の行程も話題づくりの討論会のための付け焼刃でしか無いのか。大方、20日の新聞には
> 東国原知事に開口一番「昨日、一昨日と車で行ってきました」とアピールした。
って載るんだろうな。やれやれがっかりだ。

しかも嫌らしいのは、道路特定財源にしろ中期計画にしろ高速道路を造るための予算だというような世論誘導だ。地方の首長の中には当然「高速道路が来れば我が町は栄える」というお花畑な人もいるだろうが、実際はそうではなく、地方道整備はもちろん歩行者の安全確保や雪道の安全確保など生活交通の維持保全に大きな貢献をしていることはあまり世で取り上げられない。これはいかんともしがたいもの。

とりわけ、中期計画を見れば一目瞭然なのだが、中期計画65兆円(国交省素案ベース)のうち、高速道路など基幹ネットワークに費やされるのは24兆円。これに対し、渋滞対策や開かずの踏み切り対策、生活基幹道路ネットワークの形成など地域交通に充てられるのが33兆円(うち13兆円は両者に重複)と、実は長距離交通網の形成よりも生活交通の充実に結びつく金額の方が大きいのだ。既に高速道路が通っているような自治体ですら暫定税率撤廃に反対するのは、こういうわけ。こちらの使い道の議論(ちょっと地方分権の話は置いておいて)もそこそこに、やれ地方の高速道路がどうこうだの、需要予測がどうこうだの、というのはいかがなものか。こと、これの先鋒となっているのが、1泊2日でわかった気になって延岡を後にする東京18区選出のお方なのだから片腹痛い。渋滞対策箇所の約1割を占め、開かずの踏み切りの13%を抱える東京のお方は、そちらの議論をする意思と覚悟はおありなのだろうか。

さて、最後にそんな週末に山形で行われたこんなお話。
道路特定財源:確保求めて県大会 知事ら800人出席 /山形(毎日新聞)

> 斎藤弘知事、市町村長、県議など約800人が出席し、
> 揮発油(ガソリン)税の暫定税率維持や、年度内の関連法案成立を求める緊急決議を採択した。
>
> 県や県議会など地方6団体で組織する県自治体代表者会議主催。
> 国会議員では、自民党の遠藤武彦衆院議員が出席し、
> 自民、公明党の他の4議員は秘書などが代理出席、民主党の2議員は欠席した。

相変わらずこちらもこちらで前時代的なことをやっている。
やっぱりお遍路さんを庄内に連れてくるべきだったかもしれない。

2008年02月20日

やっぱり宮崎しか見なかった菅直人

この前、「菅直人の行き当たりばったりと、山形の首長のこんなのばっかり」を書いたけど、予定通り19日に討論会が行われた模様。なにしろ注目は宮崎県の東国原知事。ちくしょう、観光客だけじゃなくて波に乗りたがりの民主党まで呼び込むとは、と多くの地方自治体が思ったに違いない。

そんな場外乱闘は
東知事、民主党にムカッ!…道路特定財源公開討論会で(スポーツ報知)
東国原知事、民主党の時間変更に不満爆発…「カチンときた」(サンケイスポーツ)
をごらんあれ。
> さらに菅氏らが17から18日にかけ、車で宮崎などを視察したことには「感謝している」とした上で、
> 「今度は突然、日曜に車で来て『一緒に視察しましょう』なんて無理がある」。
に笑った。国会議員が国会優先なのはわかるけど、自分たちが流れを作れると思っているのが面白いなあ。もっとも、小沢さんは国会議員だけど大阪の選挙応援を優先して叩かれていたっけか。

さて、菅さん叩きはこの辺にして、産経が討論会と共同記者会見の様子をアップしているのでまずはその一覧をリンク。
【道路討論1】麻生全国知事会長「暫定税率維持を」
【道路討論2】菅氏「一緒に改革を」
【道路討論3】東国原知事「道路特定財源の確保を」
【道路討論4】逢坂氏「道路特定財源見直しは必須の課題」
【道路討論5】菅氏「道路は平等性が担保されていない」
【道路討論6】東国原知事「一般財源化した分を地方にくれるのか」
【道路討論7】麻生知事会長「一般財源化は方向としては正しい」
【道路討論8】東国原知事「地方に道路をつくってくれる根拠が見当たらない」
【道路討論9】東国原知事「道路の決め方を明確化してほしい」
【道路討論10】東国原知事「国交省から財務省に移すだけではないか」
【道路討論11】菅氏「道路ができれば活性化するというのはちょっと違う」
【道路討論12】麻生知事「腰を据えた本質的な議論をやってもらいたい」
【道路討論13】東国原知事「暫定税率を廃止されると予算が組みづらくなる」
【道路討論14】共同記者会見その1、東国原知事「民主党さんに対する印象は変わっておりません」
【道路討論15完】共同記者会見その2、東国原知事「道路を必要な、本当に真に必要な道路を本当に作っていただきたい」

前回、
> 大方、20日の新聞には
> > 東国原知事に開口一番「昨日、一昨日と車で行ってきました」とアピールした。
> って載るんだろうな。
なんて書いたけど、菅直人は
> 実は昨日と一昨日、宮崎県におじゃまをいたしまして、
> 大分空港から車でずっと南下して、延岡さらに宮崎、
> 翌日には東国原知事の生まれ故郷であります都城を通って、鹿児島に抜けて戻って参りました。
と期待を裏切らない出だしだったのでまずは及第点。

今回の議論の発端から発展までを見ている人はお気づきの通り、ガソリン高騰-ガソリン税の暫定税率-道路特定財源-中期計画(あるいは枝分かれして道路特定財源-地方財政)という極めてミクロからマクロな方向に向いている。「国民の生活が」「ガソリンがリッター25円安くなる」で始まった話が、いつの間にか「10年間で59兆円」という庶民の財布と縁遠い金額になって、きっといちばん困っているのは民主党。

昨日の討論会は、相手にするのが知事とあって、どうしても議論の中心が上に書いたものの右へ右へ寄ってしまうのは間違いない。民主党としては、どれだけ無傷にやり過ごし、地方の不満をなだめられるかにかかっていた。当然、見ていくポイントとしては「民主党がどれだけ主張できるか」ではなく「民主党がどれだけ知事の主張を取り込みいなしていけるか」のはずだった。

トップバッターの麻生福岡県知事は極めてスマートに地方の道路事情を説いた。生活道路にしろ産業基盤のための道路にしろ、地方のインフラは道路にかかっているというもの、また単に暫定税率を廃止するだけでは収入に欠損が生じることを述べる。上に書いたポイントでいくと「暫定税率-特定財源-地方財政」というラインだ。知事の意見表明としてはいたってシンプル。
〆めでは、この時期に問題提起をした民主党に対してチクリと一撃。
> それからこの問題は維持しておって、大きな、いろんな課題が提起されています。
> これは本格的にちゃんと腰を据えて議論して、整合的な対策を作る。
> そういう方向でやっていくべきですね。今われわれは予算審議をやっていますけど、
> 本当にこの予算を審議してどうなるのか。4月からいったいどうなるのか。
> 大混乱に陥ってしまうのではないかということでございます。

ところが、ここで菅直人がいきなり舵を切り誤る。先に書いた宮崎道中記を語った後に、
> 私も、地方にとって道路の必要性の高いところもまだまだあると。
> 問題はその必要性、その重要性、その優先度を、誰が、どういう基準で決めるかにある。
> つまり、これまで例えば宮崎が、東側が遅れていたのが、
> 公平公正なルールに基づいて、こうこうこういう理由で遅れたんですという、
> 私、説明があるかと思って、さっそく国土交通省を呼びました。
> しかし、残念ながら国土交通省というのは、遅れた理由についての一切説明はありませんでした。
と、「道路整備がなされなかった(偏っていた)のは国交省の恣意的判断のせいだ」という割と国政レベルの話をされてしまい、さっそく議論が噛みあわない。「知事が陳情に行く国交省を俺は呼びつけてやったぜ」「あいつら何の説明もしない悪者だぜ」と言われても困る。というか、暫定税率や特定財源をすっ飛ばして「中期計画」の話から入ってどうする。片やミクロからマクロ、片やマクロからミクロなのでこれはすれ違いが生じる。
しかも何をドジ踏んだのか、道路特定財源では完全に脱線となる高速道路の話にまで踏み込んだ。菅氏本人も
> 少なくとも道路公団、今で言う株式会社の費用は、これは税金は入っていません。
> 少なくとも、仕組みとしては減ることにはなっていません。
と認めているが、そもそもいわゆる税金で作っていると整備が遅くなるからという理由で誕生したのが有料道路制度であるし日本道路公団だったのだから、道路特定財源やその一般化あるいは税源委譲の議論では完全に勇み足だ。しかもそれに続けて、
> しかし、そういうものが無駄なかたちで使われていれば、
> 本当に必要なところに使われてないことになる。
> (中略)せっかく巨額の金を使って作った道路が、高い料金のために使われないのは
> 二重の損じゃないですか。そういう仕組みをどうやって変えるかという議論が
> やっと今始まったんです。
という、なんで宮崎から東国原知事が来たのかわからない展開に。「やっと今始まったんです」じゃなくて、「今この場でそんな議論を始めるなよ」という感じもしなくはない。道路特定財源が有意義に使われているかどうかに、(恐らくさらし者としてうってつけだったんだろうけど)アクアも本四を持ってくるのは、論理のすり替え以外にほかならない。これは非常に残念だ。

3番目に出てきた東国原知事は、最初こそ民主党への攻撃や高速道路の整備状況を語るなど、ややグダグダ感が否めないが、(思っていたよりも)ヤバい宮崎県の懐事情やインフラ整備が与える効果をとつとつと積み重ね、最後には交通基盤の整備について
> これをまず国の責任を持って平等にやってほしいんです。
> そこから地方間競争を、さあスタートと言ってほしい。
> その整備を最低でも平均ぐらいにはしてほしいというのが私の主張でございます。
と述べて〆た。これはいわゆる地方の首長の主張(シャレではなく)としておよそ一般的な意見ではなかろうか。これを「財源の委譲」「責任と権限の委譲」の三位一体に持っていくのは簡単だ。ただそこで議論を拡散させてはこの討論会を開いた意味が無い。

ところが、その次に出てきた逢坂議員は元ニセコ町長だけあって、議論をうまく持っていく。
> しかし、道路整備は性質が悪いモノで、個別の道路事業をとりあげて、
> この道路いりますか、いりませんか、この整備必要ですか、不要ですかといわれると、
> どれもこれもみんな必要なんです。
> 今よりも状況が改善されるということになれば、その説明は不用で、言えないのが現実です。
> (中略)全国の首長が「道路特定財源維持」という気持ちは十二分に理解できるが、
> もう一歩ひいた総合的な視点で、国民の生活の豊かさを考えてみるべきだ。
これは至極ごもっとも。地方の首長は「民主党の意見や対案には具体性が無い」と言うが、地方の首長が言う「道路特定財源は必要だ」にも、「絶対に必要だ」という部分がいかほどかという具体性が(維持修繕の予算は固定費用だけど)欠如しているのをさりげなく指摘している。
さらに、
> 私が思うのは今、私たちに必要なのはその整備の進め方や決定の仕方、
> それらを検討してこれまでの50数年よりも効率よく、
> 効果的に道路整備を進める方策に転換することが重要です。
> いままでのやり方を踏襲するだけではだめで、すなわち単なる財源の温存だけでは、
> 全国の首長が道路が必要といっているものは達成できないことを理解してほしいんです。
> 国民のみなさんから信頼を得て道路整備の王道を歩むためにも、
> 道路特定財源の見直しは必須の課題になっていると思います」
と上手く〆たつもりになっているが、これは道路特定財源=ハイスペックな道路の整備というイメージ戦略に乗ったもの。ここが少しばかり残念だ。自ら
> 私がかつてすんでいたニセコには高速道路はない。
> 町長時代に陳情したが、残念ながら実現していない
と言っているが、ではそういう自治体には道路特定財源は配布されていないのか?否。ニセコでは道路特定財源を陳情にだけ使っていたのか?否。国会で議論すべき道路(いわゆる国土開発幹線道路など)と生活道路を切り離して取り上げているのに、自分があたかも地方自治体の長として語っているかのような話の展開は、はたして理解されているだろうか。非常に惜しいなあと残念でならない。

さて4人話が出揃ったところでフリー討論に。ここでのポイントは「暫定税率分をどう扱うか、廃止するならその代替財源は?」「本則部分についての扱いはどうか、一般財源化するのであれば地方配分の額は?」というもの。当然、地方の長は、「地方財政を支えている収入がどうなるか」がメインになるので、ここをどう説得できるかだ。

(一般財源化後の配分について)
> 東国原:おそらく民主党は一括交付金として配ることを話していたが、
>  交付金になったら、地方分権もクソもない。
>  交付金は県とか市町村が国に申請し、頭を下げてもらいにいかないといけない。
> 逢坂:それは違います。
>  それについてはいわゆる今、国でやっているまちづくり交付金とかとは
>  まったく性質が違うモノで、純然たる一般財源として渡したいと思っている。
>  特に、国でいう道路整備臨時交付金の形、一般的な補助金はすべて廃止しようというのが
>  民主党の考え方です。それから、今の道路関係譲与税は今と同じ形で渡して、
>  使途だけは決めないとする。心配には及びません
> 麻生:理解できないのは18兆円の補助金を交付金にかえる過程で6兆円の節約をしろという。
>  そういう計算式。6兆円はどうやってやるのか。それで現実的に可能なのか。
>  現に18兆円の補助金のうち70%は義務的にどうしても使わないといけない社会保障関係です。
>  これは削れない、年々増やさざる得ない実態がある。
>  その実態を考えずに、ただ交付金にかえる。きれいなところだけ。
>  6兆円は一体でどうするのか。そこについて合理的な根拠がないことを懸念しています。
> 逢坂:道路特定財源の話からずれているが、麻生知事の今の指摘は、
>  私、実は19兆円のひも付き補助金廃止法案の策定に関わっているが、
>  およそ15兆が義務的経費だということは理解しています。
>  実は、一括交付金の総額はだいたい今の額よりも若干減る程度です。
>  そこから6兆出すということは私ども言っていません。
>  たぶんコミュニケーション不足なので、これは楽屋で詳しくお話しをした方がいい。
>  ここで話しても出発点の情報認識が違うので。
ああああ、麻生惜しい。
さて、この後、一般財源化に関して受益者負担の点から両知事と逢坂氏が熱く議論。これはけっこう面白い。時間をかけて行うべきだなあ。と思ったら、ここで菅直人。

> 菅:あの、先ほど申し上げたつもりですが、少し関連して逆に申し上げると、
>  高速道路部分は二重取りされていますね。通行料とガソリン代を二重取りされている。
>  プール化されているから、どちらからというと、収益性の高いところで稼いだものを
>  収益性の低いところの高速道路をつくってきた。
誰かこいつを吉祥寺に叩き返せよ。なんで税制の受益者負担の議論で有料道路制度が絡んで来るんだよ。

> 菅:ただですね、そのことと一般財源のときの財政配分をどうするかということ、
> それはいくらでも考えられるので、ある種の逆比例とか、
>  所得に対するある種の逆比例的なやり方とかありますから、
>  逆にいうと、一般財源でなければそういう公平な、あるいは過去にさかのぼる
>  公平な配分ができないということではないと思っています。
>  そこで逆に私の方から1つだけお二人にお聞きしたいのは、まさに決定システムですね。
>  宮崎県の東九州道路が遅れた。私から見ても、なんでこんなに遅れたかと思う。
>  問題は決定システムがまさに不透明でブラックボックスなんです。
>  それによって、いわゆる族議員的な力が左右する、あるいは自分のところだけ、
>  例えばアクアラインのような大間違いの計画でやっても誰一人責任をとらないで、
>  借金をどんどんつけ回していく。
>  こういうシステムを生んでいる背景が道路特定財源という制度そのものに入っている。
>  それについてどうお考えかですか。決定システムがおかしいんじゃないですか。
前半部分は支離滅裂だし、なんで道路特定財源の一般財源化、配分の話から道路族議員の利権誘導の問題に発展するんだろう。この人は結局国会議員なんだなあと思う。聞かれた両知事は話の腰を折られて可愛そうだ。と思ったら、さすが東国原知事。
> 東国原:その前に、ちょっとあの、(会場の民主党席から「答え避けてる」の声)
>  えっ、なんすか。あの、その菅さんの司会進行で進められると困るんですけども。
「答え避けてる」も何も、話を強引に展開したのは菅さんだろうに。

ダメな上司の責任は部下が取る。逢坂議員はかなり株が上がったよ今回。
> 逢坂:今回、暫定税率の延長をしたからといって仕組みが変わるとは思えない。
>  東国原知事は今、『今度はわれわれの番だと思ったのに』とおっしゃったが、
>  この道路中期計画の中に『今度はわれわれの番だ』という風に分かることが
>  書いてあるんでしょうかね。何も書いていないんですよ。
>  (中略)私はこの業界に長くいるので、何度もこれまで煮え湯を飲まされてきたので、
>  ぜひそのところは一緒に共闘組んでやらないと、本当に宮崎に道路できません。
と、ここで
> 東国原:民主党に誘われているんですか
> 逢坂:いやいや
というコントにつながるわけだけど、国政の議論のためには地方の追い風が必要だということが逢坂さんはよくわかっている。ゆえに、引っ張り込み方も上手い。東国原知事がそこで「道路建設の優先順位がわからない」と議論に乗ってくると、菅氏もさっそく食いつく。にしても結論が合わない合わない。というより合うわけがない。
> 東国原:だから新たな基準は国交省に求めていきたいと思うが、
>  そのためにも道路特定財源というのは確保しなければいけないだろうという話です。
> 菅:私はそこの考え方はまったく逆側なんです。
>  つまり、最初に確保されてしまうと、国会ですら総額については、もう議論しないで結構ですと。
>  聞いたんです国交省に。
>  (中略)ですから、私は基準を国土交通省にだけ作らせるのはだめだと。
>  逆にいうと、お金を先に渡して、あとは基準をもうちょっとしっかりしてください、
>  といって、この50年間か失敗してきたわけですよ。
>  逆にいえば、宮崎県の東の通りができなかったことを徹底的に、
>  その根拠を調べることによって不公平なことがなかったかどうかが明らかになってくると思います。
>  私は明らかに恣意的な判断がされてきた、その背景に一般財源じゃなくて特定財源
>  というものがあることをいっている。そこは考え方がかなり違いますね。
考え方が違うのは、知事たちが道路特定財源や道路整備が明日どうなるかを気にしているのに対して、菅氏が道路特定財源を使ってきた国交省らを糾弾したいという違いから来ているのかな、と考えてしまう。一人予算委員会なのでさすがに浮いてきている。
> 菅:つまりは、国土交通省がどのくらいの力を持っているか、
>  麻生さんはご存じなんじゃないかと思う。
>  それを壊さない限りは結局は自分たちが持ったところに対して、陳情合戦をされるわけでしょ。
>  (中略)そういう意味ではまさに決め方そのものを変えなければならないというところで、
>  私は皆さんとも意見一致すると思うんです。いかがですか
> 東国原:ですから、決め方を明確化してほしいというのは私も同じ立場なんです。
>  で、その決め方を示してほしいと。同時にそれが一般財源化ではないんですね。私の中で。
>  安定した財源を確保した中で決め方を示してくれと、
>  私は与党さん、あるいは政府には言いたいですね
> 菅:安定するということは逆に言うともう、総額が決ってますから、
>  つまりは減らされることがないから、平気で無駄遣いするというのが、
>  私の少なくとも20数年の国会議員としての経験です
> 東国原:経験を言われるとちょっと困るんですが、私もね。
と、「与党さん、あるいは政府には言いたいですね」という完璧に民主党スルー宣言をこれまた完全にスルーする菅氏。ハイレベルすぎる。やはり、「国交省が悪だ」「地方はこうしなきゃダメだ」というのを地方の知事相手に説くというのは、単なる「民主党の講演会」でしかない。
しまいには、逢坂氏もこれ見よがしに「ある省庁の予算の積算書」とやらを持ってくるが、
> 東国原:どこの省庁のですか
> 逢坂:まあ、ある省庁とだけ言っておきますが(中略)これ一般会計なんですよ。
>  特別会計になるとさらに遠いんですよ。だから本当に必要な道路を安いコストで
>  できるかどうかっていうのは、特別会計じゃチェックすらできないんですよ
> 東国原:いや、今日は道路の話ですから、その、どこの省庁のです?
> 逢坂:いえいえ、ですから道路特別会計というものだと、チェックが国民からさらに遠くなるんです。
>  それを少しでもわれわれの手元に引き寄せて、見える形にして、
>  本当に宮崎に必要な道路や私の地元の函館に必要な道路を作りたいんですよ。私も
と、微妙に議論のすり替えを見破られていささか迷走気味。

ここで、菅氏が道路整備による地域社会の発展というテーマに話を振ると、ストロー効果や緊急医療の問題に話が広がる。地方は緊急医療における道路整備の重要性や、道路以外にも波及しうる財源であることを語り、民主党側は一般財源化すれば道路だけではなく病院や教育といったインフラの形での整備も可能と応酬する。ありがちな展開ではあるが、非常に噛みあってて面白い。
と、ここで菅直人が、
> 菅:そろそろ時間が10分を切ったところですので、どうでしょう、
>  最後に2分間ずつ、それぞれのまだ、言い足りなかったところをお話しいただければ
>  と思うんですが、順番は同じでいいですか、麻生さんから
となぜか仕切る。

> 麻生:秋の間にですね、やはり、予算編成、どういう点が問題があるということで、
>  政府与党はもっと真剣な議論をしてですね、そして整合した、合意されたような、
>  基本的には問題点は合意された形で提出すべきですね。それができていない。
>  提出された後にこういうことになって、われわれの方は地方の方でですね、
>  予算編成をしようがないという状態なんですね。だからわれわれですね、とにかくですね、
>  とにかく暫定税率は維持してくれと、そうでないとどうしょうもなくなるぞ、
>  ということでいるわけですね。
と、今回余波をおもいっきり食った地方の長らしいご意見。議論が年度末まで収束しなかった場合、民主党は自民党の責任に押し付けられるだろうけど、知事はそうもいかないわな。
> 菅:しかし、私たちの立場から言えば、何十年ぶりかに初めてやってきた議論のチャンスなんです。
>  昨年の参院選の与野党の逆転がなければ、こういう議論はほとんどされないで、
>  3日とか4日の国会審議でするすると通っていたんです。
>  まさに政府が出している案はですよ、1年ではありません。半年でもありません。
>  10年間この制度をそのままやりますという案、まさにそういう決意を持って出してきた案なんです。
>  ですから私たちとしては10年間、59兆(円)、このままのやり方を続けるのか、
>  それとも根本から変えるのか、私は国民に信を問うだけの意味のある議論だと、
>  このように思っています

議論は結局互いに平行線のまま。記者会見での麻生知事と菅氏の発言がそれを物語っている。
> 麻生:第1の点はですね。民主党さんはもう少しですね、言葉はですね、
> 立派な言葉を使っておられるが具体的にはどうするのか。
>  どういう制度的な制度改革をやろうとしているのかという代案をですね、
>  示してもらいたいという感をますます強くいたしました。
>  2番目の点はですね、私がさっき申し上げたのは、ともかくわれわれの立場は
>  暫定税率はまず維持しといて、いろいろな問題提起されていますから、
>  それはご指摘の問題を含んでいるから、
>  ちゃんと検討すればいいということ言っているんですけども。
>  その際にはわれわれですね、知事会としてちゃんと地方の意見という形で
>  まとめて提起するということを考えます
> 菅:対案という意味なんですが、きちんとした対案を出しているつもりです。
>  まずは暫定税率が切れる。切れていいと。それから特定財源、道路特定財源を廃止する。
>  そして財政配分について、いろいろご意見はありますが、
>  わが党としては地方の減収にならないようなかたちで対応すると。
>  きちんと基本的な案を出している。
>  (中略)問題は、今よく対案といわれるのは、この自民党政府が出したですね、
>  国土交通省が出した道路の中期計画的なものを出さないか、ということを言うんですよ。
>  しかし私たちはこの土俵そのものがおかしい。
>  こういうとらえ方そのものがおかしいということを言っているわけですから。
>  その土俵の中でですね。ですから、私は宮崎の道路は個人的に必要だと思いますが。
>  そういうものをこういう形で国土交通省が恣意的に決めている、
>  そのこと自体を壊すことが最大の対案です。民主党が対案を持っていないんじゃないです。
>  一番大きな対案を出していると、そう理解してください
東国原知事が「とにかく道路を造ってほしい」という陳情型になっていたのも残念だったけど、それをいなしつつ、地方の窮状を汲むような姿勢が感じられなかった永田町の菅さんにも残念な討論会だと思った。

2008年02月22日

「高速道建設に『抜け道』 1850キロは審議不要」という見出しへの違和感

事の発端は、先日朝日新聞が1面トップで伝えた
高速道建設に「抜け道」 1850キロは審議不要(朝日新聞)
の見出し。

先に書いていくと、確かに「高速道路」の定義があいまいなのはある。高速自動車国道法や国土開発幹線自動車道建設法でも用語の定義はされておらず、道路交通法関係(高速道路では原付などは走れない、というあれ)で「高速自動車国道と自動車専用道路」、高速道路会社法関係で「高速自動車国道と会社管理の一般有料道路」となっている。つまり、交通の管理という点から見た定義と、会社が管理する道路とい点で実態を定義したものしか無い。

恐らく、ほとんどの人がイメージするおおよそのイメージとしては、「自動車だけが走る、交差点の無いハイスペックな有料道路」みたいな感じだろう。狭義な点から連ねていけば、高速自動車国道<一般有料道路<そのほかの自動車専用道路といったところか。このどこに「ここからが高速道路」という線引きをするのは、案外難しいのだ。とりわけ、「整備の根拠になっているのが何か」という区分と相互に考えるとなおややこしい。高速自動車国道(いわゆるA路線)はいいとして、一般有料道路の中には、米沢南陽道路のように「将来、高速自動車国道に編入されるかもしれない」という意味で先行して作られた一般有料道路(いわゆるA'路線)と、三陸自動車道(矢本石巻道路)のように「高速自動車国道ではないけれどそれを補完する」という一般国道の自動車専用道路(いわゆるB路線)もある。あれ?お金を取られない自動車専用道路は高速道路の概念に入らないの?というとこれも怪しい。例えば尾花沢新庄道路は、「将来、高速自動車国道に編入されるかもしれない」いわゆるA'路線だし(なぜ無料なのか、というと米沢南陽道路は旧JHも施工に加わっていたため、その分だけ料金徴収の対象となっているから。尾花沢新庄道路は100%税金で作られ償還制度と関係ないので無料)、新庄南バイパスは無料の自動車専用道路だけどこれは国道のバイパス道路。ちなみに、ここまで並べたアルファベットの道路が、1987年に四全総で定められた高規格幹線道路、約14,000kmになる。

とまあ、単純に有料か無料か、あるいは高規格幹線道路かどうか、で万人に共通する「高速道路」に一致するかというとなかなか難しいのだ。上に書いたように、有料のA'(米沢南陽道路)と無料のA'(尾花沢新庄道路)、有料のB(三陸道・仙塩道路)と無料のB(三陸道・矢本石巻道路)があって混乱してしまう。しかも、これらをどこまで「高速道路」として捕らえるかというとなお難しい。

さて、ここで朝日の記事を見てみる。まずはこの図。
朝日新聞から

上に書いた約14,000kmのうち、既に開通しているもの、旧道路公団民営化時に評価を行ったものを除いた約2,900kmを先日の中期計画で評価したものの、
> この方針には野党などから「いつの間に造ることを決めたのか」との批判が出ていた。
> これに対し冬柴国交相は「計画段階」としたうえで、
> 「国幹会議の議論を経て厳しく査定しながら真に必要なものを造っていく」として、
> 野党議員を含めた国幹会議を経ることで客観的に必要性の有無が決まる、と説明していた。
>
> しかし、国交省などによると、この2900キロのうち1400キロは、
> 一般国道の自動車専用道路(B路線)。
> 高速道路会社が管理する高速道路より最高速度を抑えられている路線が多く、
> 国幹会議の審議は必要ない。
>
> さらに残りの高速道路(A路線)1500キロのうち約450キロ(事業費2.3兆円)は
> 「高速道路に並行する国道」(A'路線)という位置づけで、
> 国幹会議の審議は不要なことが分かった。(朝日新聞)

実はこれ、引用冒頭の冬柴大臣の国幹会議の説明はともかく、制度自体はこの20年弱変わっていないので、今さらわかったことではない。

また冒頭の
> 政府が道路整備中期計画で整備方針を決めた高速道路など「高規格道路」2900キロのうち
> 3分の2にあたる約1850キロは、国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)の
> 審議を経ず建設できることが分かった。
> 国道として着工するが、高速道路の規格で整備、完成後に高速道路に「格上げ」される路線も
> 450キロ含まれ、一部は着工済みだ。
> 冬柴国土交通相は国幹会議が道路建設の必要性について判断するとしていたが、
> なし崩し的に造られる恐れがある。
だが、

1,850kmのさらに3/4にあたる1,400kmは、そもそも「高規格で作る一般国道」として国土交通大臣が定めるものなので、そもそも国幹道法で予定路線に含まれていない部分について、「国幹会議で審議されない」というのは決して抜け道でもなんでもないし、今さら「分かった」というのもいまいち釈然としない。ましてやこういうレトリックに関しては日本一のジャーナリスト宣言、朝日新聞だ。こうなると冬柴大臣の答弁を引用した
> 「国幹会議の議論を経て厳しく査定しながら真に必要なものを造っていく」
という言葉も、ここに書かれていない「主語」が、はたして「高速自動車国道」なのか、「高規格幹線道路」なのかというのもチェックが必要な気がする(前者なら何ら誤った答弁ではないが、後者なら誤った答弁)。A'が後付けで国幹会議にかけられるのは確かに疑義が生じるが、B路線が別枠であることを「抜け道」とするのには疑問だ。

特に違和感を覚えるのは、記事のタイトル「高速道建設に『抜け道』 1850キロは審議不要」だ。上の図で既開通+整備計画策定済の部分で「一般有料道路」「国の高速道路整備計画」と分けており、これはいわば「B+A'」と「A」に該当するわけだけど、どうやら「高速道路」はA路線と定義しているようだ。しかも、これからの部分についても「B路線」「A'路線」「A路線」をそれぞれ「自動車専用道路」「高速道路に並行する国道」「高速道路。国幹会議の審議を経て建設が決まる」と説明し、B+A'について「国幹会議の審議なしに建設できる」とくくっている。
ところが、朝日は記事の見出しで「B+A'」を「審議不要の高速道」と書き、「高速道路」と定義した「A路線」と微妙に語句を変えている。上手いな。だって、「B+A'」を「審議不要の高速道路」って書いたら、少なくともBを高速道路と別書きにした下の図と齟齬が生じるんだもの(もっとも、B路線の区間を国幹会議にかけて後追いで予定路線→基本計画→整備計画区間とする手もあるけれど、非現実的か)。しかも本文冒頭では同じように「高速道路など『高規格道路』2900キロ」と「高規格道路」という単語を使っている。このへんの印象操作が上手いよね。

さて、散々朝日の嫌らしい書き方を叩いたあとで書くのもなんだけど、A'路線というのは、やはり手続きの正当性という観点から疑問が残る。それでもやっぱり「抜け道」と言われても仕方ない450kmだけではなく、都合よく言葉を選んで1,850kmまで膨らませることには違和感を禁じえない。

===追記===
「抜け道」高速道、着工前に審議へ 冬柴国交相が表明(朝日新聞)
また同じことをやってるし。
というか、一般国道の自動車専用道路って(そりゃ三陸道と外環を一緒にしようとは思わないけど)全部が全部国土開発幹線自動車道建設会議にかけなきゃならないものかなあ?
恐らくいくつかの路線が犠牲になって三方一両損になるんだろうけど、政治家さんたちの駆け引きと自己満足に終始している気がする。

2008年02月26日

「連携は前進の手段」大崎―最上・庄内地域間交流語る

「連携は前進の手段」大崎―最上・庄内地域間交流語る 新庄(河北新報)

> 山形県最上総合支庁などが組織する
> 「最上・庄内両地域間活性化委員会」(座長・柴田洋雄山形大名誉教授)が25日、
> 新庄市内であり、国道47号を軸にした
> 宮城県大崎地域と山形県最上・庄内地域の広域連携などについて議論した。

最近なにかと元気な話題の少ない最上だけに、これはぜひとも盛り上げていってほしいところ。

> 佐藤氏は「広域連携を進めていくには、核となる大崎市や新庄市が
> パワーアップした上で連携を強化することが大切だ」と強調。
> 鈴木氏は「新庄市は東京や県都中心の意識から脱却し、
> 鉄道や道路のターミナルだという認識を持ってはどうか」と提案した。
> 柴田氏は「連携は無いものを補うのではなく、前に進むための手段」とし、
> 「連携の意味を考え直せば、開発が遅れていても最先端の地域になりうる」と総括した。

河北新報の鈴木山形総局長の言葉はなかなか意味深なところ。
広域連携って何かを一極集中させたり、逆に全てに多くのものを撒くものでもないからね。
新庄が最上の中心都市であることは間違いない。それ以外の地域から見られることだけを意識するのではなく、新幹線の終着駅という面と、南北と東西に走るR13・R47と奥羽線・陸羽線の経由地としての役割があることをもう一度見直せば、地域全体の底上げにつながるのではないか、と直感的に思った。あくまで直感的に。

「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」でNEXCO東日本などがETCによる1万円均一周遊サービスを導入予定

高速道1万円乗り放題 仙台・宮城DC期間 観光客対象(河北新報)

お隣宮城がやけに盛り上がっているが少し癪な「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」だが、山形県もこれに食らいつくべきだと思う。

大きな理由として、もともと首都圏から東北にやってくる観光客の場合、列車よりも圧倒的に自家用車やバスの割合が多いということ。もちろん帰省やビジネスなど行って帰っての場合は別だ。また、各観光地が離れていることも相まって比較的長い旅行期間と長い移動距離というのも特徴。とすると、例えば2泊3日の旅行になった場合、このうちの1泊分や1日分の移動を山形に引き込むのも可能になってくる。この記事にしても、
> 東北道で仙台入りし、松島、岩手県の平泉を車で回った場合、
> 2万円以上かかる高速料金を約半額の1万円均一にする。
というアピールをしているが、岩手県の最南部に位置する平泉が世界遺産ブームを背景に、宮城からの客を引き込むのにかなり熱心なのは元々知られていたところ(もっとも、日帰り客が多くて地元にお金があまり落ちないとか、北上以北にはあまり波及しないとか悩みもあるようだが)。仙台市内から1時間かかるかかからないかという地理的条件、蔵王や山寺といった中高年にも知られたスポット、天童や上山といった温泉など、勝算もいくらかあるだろう。
> 宮城県全域と岩手、山形両県の一部で高速道路が乗り放題になる
> 周遊サービスを行う方針を固めた。
ということなので、「宮城のキャンペーンだから」ということではなく、果敢に攻めていってほしいと思う。

ただ、この記事をよく見ると、自家用車(普通車・軽自動車限定かなあ?)を対象にしているところが少しばかり残念。ETCを使って事前申し込みによる周遊キャンペーンというのは、既に岩手で先行して行われている「スキーに行こうcar! 安比・八幡平エリアスキー場 ETC遊遊割引」の例と同じような感じになるのだろうけど、ちょっと趣が異なる。あちらは100km圏内のユーザを対象にしたものだけど、こちらは300km以上離れた首都圏の客をターゲットにしようとしている。確かに東北を旅行するには車が便利ではあるけれど、東京からずっと運転して来るような人だけをターゲットにするのは少し危険なような気がしなくもない。どちらかと言えば、仙台を基点として新幹線+レンタカーという客を狙ったほうが効果が高いんじゃないだろうか、という考えが湧いてくるんですが...。
自分は逆に遠慮なく使わせてもらうけど...。

上山明新館高校の馬術部が休部へ

上山明新館高 馬術部が休部へ(山形新聞)

あ、なんかこれはショックだ。
かみのやま競馬場が無くなった時にこうなることは予感していたけれど。
廃部ではなく休部というところに、浅はかながらも期待したいところ。

2008年02月27日

県道路整備促進協議会の道路特定財源維持緊急アピール冊子、顔写真はいらないだろ

首長、顔写真でアピール 道路財源の堅持 山形県協議会(河北新報)

> 山形県と市町村などで構成する県道路整備促進協議会(会長・富塚陽一鶴岡市長)は
> 道路特定財源の暫定税率を堅持しようと、
> 全35市町村長の一言を集めた緊急アピールパンフレットを作製した。
> 国への要望活動などで活用する。
> A4判、4ページ。各首長の顔写真と一言、関連写真を掲載している。

いや、首長の顔写真と一言なんていらないだろ。常識的に考えて。

と思ったら、一言というのはこういうものらしい。
> 渡部秀勝戸沢村長は雪道でトラックが横転した写真を使い、
> 「暫定税率がなくなると、安全で安心な道路整備、道路除雪が大きく後退します」
> と不安を強調した。
> 横戸長兵衛上山市長は小学生の列とダンプカーが擦れ違う写真とともに、
> 「ダンプが子どもたちの通学路を通らざるを得ない道路状況を、
> このまま見過ごしていいのでしょうか」と呼び掛ける。

なるほど。実際の現場の写真を入れるのは、35市町村それぞれに訴えどころが異なってくるので、あたかも電報の定型文のような「とにかく維持を訴える文章」よりもモノが見える効果はあるかもしれない。
ただ、それだったら、単に35市町村ずらっと並べるのではなく、使い方の分野(整備にしても高規格道路なのか生活道路なのか、雪道の維持保全に関することか、歩道や狭小部の改良なのか)ごとで見せてみたりするのも一つの手だったんじゃなかろうか、なんて考えてしまう。

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