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日本道路公団の16年度決算と道路別収支状況

日本道路公団(JH)の平成16事業年度決算と営業中の高速道路及び一般有料道路の収支状況等について(日本道路公団)

おおようやく発表か。一般企業と異なる償還主義は、相変わらず整理しにくくてしょうがない。ここで独断と偏見で公団の決算書の読み方を紐解いてみる。

高速道路事業でいちばん誤解を受けるのが、営業中の高速道路が日々赤字を垂れ流しているというものだ。はっきり言ってビビる。大黒字だ。損益計算書を見ると、16年度は業務収入(料金収入以外も含むが微々たるもの)が2.1兆円に対して、これらの業務に関する管理費は0.38兆円だ。単純計算で利益率82%ってなんだそれ。

じゃあその82%どこに飛んでいるのかと言うところが問題だ。皆さんご存知のように、日本道路公団の仕事は高速道路の営業・管理のほかにもう一つ大きな柱がある。新聞テレビをにぎわせている、高速道路の建設だ。ワトキンスレポートや道路特定財源の例を出すまでもなく、高速道路の建設・運営にあたっては、「借り入れによって建設→料金収入によって償還」という流れにならざるを得なかった(どこまでその手法を用いるかというのは別にして)。道路公団特有の損益計算書に出てこない年間活動・「建設」は、貸借対照表に出てくる。ざっくり言ってしまえば、貸借対照表のうち固定負債の増加分(≒16年度借り入れた額)が、投下した建設コストであり、固定資産の増加分が、16年度に建設した道路資産ということになる。つまり公団の年間活動は、「借りる→作る」という資産&負債形成活動と、「稼ぐ→経費捻出&金利返済&元本返済のための積み立て」という返済活動なわけだ。

目つきの悪い小説家が、「公団は無駄な道路を作っている、借金を膨らませている」とかつて言っていたが、肝心なのは返済能力と計画的な借り入れであって、公団のこうした特殊なシステムを理解した上で、年々増える(あたりまえ)固定負債を捕らえていたのかはなはだ疑問なのだ(もっとも、道路を誰がどのように負担して作るかという道路行政全般に対する根本的な問題提起も必要だが)。

さて、とにもかくにも、高速道路の単年度営業収支率が41、償還率40という、想定の範囲内の数字が出てきた上、漢字ばっかりの文章になってしまったので、後半は県内の高速道路・一般有料道路についてぐだーっと書くことにする。

さて、山形県内の3路線(山形道・東北中央道・米沢南陽道路)の16年度の状況を見てみよう。そもそもつながってないんだから、山形道を村田 JCT~月山ICと湯殿山IC~酒田みなとICに分けてくれると面白いと思うんだけどなあ。まあ東北道も浦和ICから青森ICまで一本でやってるからしょうがないか。霞ヶ関の人が後で考えるんでしょう。

ここで軽くおさらいすると、15年度の3路線の収支率は、215,527,115という見ていられない数字。まあ東北中央道はそうだよな、っていう感じだけど。3割引回数券やETC各種割引がどういう結果になったかが軽く気になるところ。

●山形道(単位は億円・カッコ内は15年度・端数調整してるから合わなくても気にするな)
・収入:82(81)
・費用:158(174)
 うち管理費:37(42)
 うち金利:120(132)
・収支率:193(215)
・償還率:-18%(-17%)

 →管理費12%減も、収入がほぼ横ばいで、金利の前には歯が立たず。低金利にも助けられ収支率は22ポイント減だが、黒字転換メド立たずか。

●東北中央道(単位は億円・カッコ内は15年度・端数調整してるから合わなくても気にするな)
・収入:7(6)
・費用:29(31)
 うち管理費:5(6)
 うち金利:23(25)
・収支率:415(527)
・償還率:-5.2%(-3.4%)

 →金額こそ山形道に比べて小額だが、収入に対する金利があまりに膨大なので収支率は東北最悪の415に。

●米沢南陽道路(単位は億円・カッコ内は15年度・端数調整してるから合わなくても気にするな)
・収入:4.1(3.0)
・費用:3.8(3.4)
 うち管理費:2.8(2.4)
 うち損補繰入:0.4(0.4)
 うち金利:0.6(0.6)
・収支率:94(115)
・償還率:-10%(-14%)

 →収入が大幅な伸びを見せ、開通以来初めて収支率が100を切った。でも、このペースだと償還期間満了までに全額戻せないぞ。
※損補繰入:正しくは、損失補填引当金繰入。一般有料道路はプール制を採っていないため、単独で償還を行う。このとき、計画通りにゆかず(よいほうに転ぶことも悪いほうに転ぶこともあるが、過去数十年だいたい計画通りにゆかない)、償還期間満了時に損失補填を行う必要が出たときのために、全一般有料道路の収入の一部からあらかじめ積み立てておくお金。ある意味プール制じゃないかとか、費用にあたるのかという疑問は残る。

ということで、3路線とも収支率は改善されたが、その理由は主に低金利と、管理費の削減と言えそうだ。億円の単位なので、中央道の細かいパーセンテージまで言えないが、おおよそ10%削減している。なるほど。それでもやっぱり赤字なのか、という落胆はぬぐえない。

しかしここでよく考えなければならないのは、純粋な「収入:管理費」だけ見ると、3路線の収支率は45,71,92となる。つまり、日々それなりの収入があって、むしろ償還準備金への繰り入れが出てもおかしくないのに、建設時の金利がネックになって火の車というわけだ。ぐは。料金収入で、管理費+借り入れ元金に加え金利もカバーする定めとは言え、金利の大きさに情けなくなるな。なんだこりゃ。こりゃあシステムそのものを考え直さないと、永遠に火の車だぞ。

と同時に、道路の費用対収益と言う点からすると、少なくとも丸っきりの赤字ではない。管理費を収入でまかなえているのだから(もっとも、管理費すらまかなえない高速道路なんて全国でも中部横断道だけなんだけど)、ネックになるのは金利ということになるのかもしれないね。

とはいえ、管理費はまかなえているんだからいいじゃん!というわけにはいかないし、管理費をまかなえているから赤字と言えないというのも半分詭弁だ。少なくとも、「もしかして管理費すらまかなえていないんじゃないか」という考えが杞憂だったというところだけ確認して、今後の公団の努力を見ていきたい。そもそもに、豪雪地帯の高速道路というのは、それだけで管理費で南国との違いが歴然となってくる。そんな中でも安全な高速道路を確保しつつ、一秒でも早い償還を望みたいところだ。

ああ、盆休みだからって長文エントリー。

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2005年08月15日 13:16に投稿されたエントリーのページです。

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