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2008年05月 アーカイブ

2008年05月01日

朝日の「抜け道高速道路」記事で思い出した、2月の冬柴国交相の発言

そういえば、以前「「高速道建設に『抜け道』 1850キロは審議不要」という見出しへの違和感」で書いた、冬柴国交相発言を思い出した。

ことの顛末は、政府が四全総で決めた高規格幹線道路、約14,000kmのうち未完成の約2,900kmの扱いについて、国土交通省が中期計画において評価を行ったことから、野党が「そもそもいつ作ることが決まったのか」という追求があったもの。
> この方針には野党などから「いつの間に造ることを決めたのか」との批判が出ていた。
> これに対し冬柴国交相は「計画段階」としたうえで、
> 「国幹会議の議論を経て厳しく査定しながら真に必要なものを造っていく」として、
> 野党議員を含めた国幹会議を経ることで客観的に必要性の有無が決まる、と説明していた。(朝日新聞)

ところが、これについて
> しかし、国交省などによると、この2900キロのうち1400キロは、
> 一般国道の自動車専用道路(B路線)。
> 高速道路会社が管理する高速道路より最高速度を抑えられている路線が多く、
> 国幹会議の審議は必要ない。
>
> さらに残りの高速道路(A路線)1500キロのうち約450キロ(事業費2.3兆円)は
> 「高速道路に並行する国道」(A'路線)という位置づけで、
> 国幹会議の審議は不要なことが分かった。(朝日新聞)
と朝日新聞が息巻く。

この時、
> 実はこれ、引用冒頭の冬柴大臣の国幹会議の説明はともかく、
> 制度自体はこの20年弱変わっていないので、今さらわかったことではない。
と書いたのだが、ここで冬柴国交相の説明について保留していたのを思い出した。
というのも、再掲になるが、
> ここに書かれていない「主語」が、はたして「高速自動車国道」なのか、
> 「高規格幹線道路」なのかというのもチェックが必要な気がする
> (前者なら何ら誤った答弁ではないが、後者なら誤った答弁)。
だからだ。

で、冬柴のおっさんは豪快に間違えていた。
平成20年2月7日 第169回国会 予算委員会
谷垣元財務大臣から、中期計画の説明を求められた際の答弁が最初の失点。っておい身内の質問でコケたのかよ。
> ただ、一万四千キロ全部つくるのかと言われたら、
> これはそのときの予算と、そしてまた国幹会議の議を経て厳しく査定をしながら、
> 真に必要なものをつくっていく、そういう趣旨でございます。
この答弁では、そもそも国幹会議を経る必要の無いA'路線(繰り返すけど、私もA'に関しては疑問を感じる)とB路線についても国幹会議による審査を行うように読めてしまう。ところが、これについて谷垣議員はもとより、その後のジャスコ岡田もこれについてはスルー。

しかし、その後誰かに言われたのか、冬柴国交相は後にこの発言を微妙に微妙に修正。5日後の同委員会では、民主党の馬淵澄夫議員の質問「中期計画に載ったものは、何が何でもやるということなのか?」に対してこう答えている。
平成20年2月12日 第169回国会 予算委員会
> そしてまた、高速道路、高速国道におきましては、当然に国幹会議の議も経て、
> そして承認された分について進めるわけでございますが、財務省の評価というものも当然ございます。
と、国幹会議を経るのは高速自動車国道だと絞っている。悲しいことに、これについては馬淵議員もスルー。そりゃ朝日もこれはスルーするわけだ。

しかも冬柴大臣、高速道路と国幹会議という大きな話題でどうにか軌道修正したかと思ったら、同じ日の共産党・穀田恵二議員の質問で自らが管轄する地域高規格道路で再度コケる。この穀田議員の質問はこれまたレトリックが巧みだ。地域高規格道路の要件が平成15年に緩和され、必ずしも自動車専用道路でなくてもよくなったことや、現道の活用も可能になったことをどっかにおいやって、
> 何もこれは地方の生活道路のことではありません。
> この道路は、信号なし、そして立体交差、自動車専用道路という高速道路そのものであって、
> 例えば首都高速、阪神高速、京都の高速道路なども含まれます。これも一般に言う高速道路です。
> この道路は中期計画にどのように位置づけられているか、この路線の計画はどうなっているか、
> 明らかにしていただきたい。
と畳み掛けている。冬柴大臣がコケるのは、この最後の方、「この問題について、道路、この地域高規格道路、これについてはどこで決めるんですか。路線はどこで決めますか。閣議ですか、どこが決めますか。国幹審ですか」という質問だ。これ、今思ったんだけど釣りじゃないのか?
冬柴大臣はここで、
> 一部はもちろん国幹審で決める部分がありますけれども……
> (穀田委員「地域高規格道路ですよ」と呼ぶ)地域高規格はそうではありません。私が決めます。
と、質問の議員に指摘されてしまう有様。あはははは。

さて、話を戻して高速道路と国幹会議の話だ。
なせ、この話を朝日新聞が22日に取り上げたのか。また12日の発言ではなく7日の発言を取り上げたのだろうか。
一つは、14日の予算委員会で民主党の武正公一議員がB路線の整備について取り上げ、18日の予算委員会で同じく民主党の松本剛明議員が
> 今の、いわば並行する自動車専用道をつくるには、国幹会議にかかりますか。
とA'路線と国幹会議について、単刀直入に切り込んでいる。これは明快な質問だ。で、これに対する冬柴大臣の答えも明快だ。
> 国幹会議にはかかりません。後で編入する場合にはかかります。

この松本議員の質問に出てくる
> 国幹会議そのものも形骸化していると我々は思いますけれども、
> その国幹会議すら通さずに、あっちこっちにいろいろな種を植えつけて、
> これをつながないとだめだ、こういう理屈がどんどんどんどんまかり通ったら、
>どこで歯どめがかかるんですか。
あるいは
> 先につくっておいて、でき上がってから編入をするというのであれば、
> 予定路線、基本計画、そして整備計画、道路の指定ということで、
> 国幹会議の意味がほとんどないんじゃないかというふうに思いますよ。
という指摘は至極まっとうなもので、恐らく朝日新聞の例の記事もこれがベースになっているのではないかと思われる。

朝日新聞の嫌なところは、冬柴大臣が12日以降に修正した「14,000kmは厳しく査定し、高速自動車国道については国幹会議でも審査する。ただしA'路線のように供用後に国幹会議を経て編入されるものもある」ではなく、7日の最初の発言を引用して「国幹会議の議論を経て厳しく査定すると言っていたが、実は国幹会議の審議が不要なものがある」と、書いているところだ。そもそも最初に間違えて言質を取られた冬柴大臣もマヌケなのだが、朝日も事実をよく理解していればあのような浅薄な記事にならなかったはずなのに、これは残念なこと。もっとも、朝日新聞の場合、わざと7日の発言をベースにしてとりあえず国を叩いておけという浅はかな狙いも感じられるので、このあたりの小手先のペンのなめ方はさすがジャーナリスト宣言、と言ったところか。

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